
お風呂の王様
正月早々、やることがないので、開店と同時に近所のお風呂やさんに行くことにした。正直言うと、やることが多すぎて現実逃避している。
「おふろの王様」というスーパー銭湯なのだが、なぜこのネーミングにしたのかを考えながら天然温泉に浸かる。昨夜の酒がまだ残っていて、少し酔っている。
本来であれば、「王様のお風呂」のはずである。「King’s Spa」となればゴージャスな感じがする。おー、さすが王様が入る温泉だ、となるはずである。
しかしながら、なぜか「おふろの王様」なのである。「おふろ」という国の王様で、イメージキャラクターは王冠をかぶった裸の王様なのだ。
なんという自己卑下なキャラクターだろう。おふろの国から外に出られない裸の王様。王冠の真ん中には「ゆ」というひらがな一文字だけが書かれており、しかもデベソである。
イラストレーターさんが酔っ払った時に思いついて、酔ったままキャラ設定したとしか思えない。権力に対する少しばかりの悪意すら感じられる。

さて、そんなことを考えているうちにのぼせてきたので、いったん上がって岩盤浴に行くとする。岩盤浴は別料金なので、普段は空いているのだがさすがに正月ということでほぼ満員御礼。
これだけ人がいると、必ずいびきをかいて寝る輩がいる。本人はどれだけ自分のいびきが他人に不快感を与えてるかなど知るよしもないだろう。岩盤浴に敷き詰めてある小石を投げつけてやろうかと、何度も思っているのだが、小生は小心者のためその行為に至れないでいる。
そこで、今回はノイズキャンセルできるイヤホンをつけながら入ってみることにした。これが強烈に快感だった。自分の好みの曲でトランス状態になった上に、身体中からサラサラの汗が噴き出してくる。いいじゃないか、最高じゃないか。
これはハマる。いやむしろ、残りの人生これだけでいい。ここにずっといて、ここで暮らして、ここで一番偉い人になろう。このおふろの世界の王様になろう。そんな気分にさせてくれる、素晴らしい体験だった。
ありがとう、おふろの王様。King of Spa。
